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◇内容省略「役に立たない」--講習、もっと効果的に 「こんな講習では役に立たない」 三重県の松本彦丸さん(76)は怒りを隠さない。昨年1月、高齢者講習を県内の自動車教習所で受けたが、「あまりにも形式的な内容だった」(松本さん)からだ。 70歳以上の運転免許保有者は3年に1回、免許を更新する際に高齢者講習の受講が義務付けられている。増加する高齢ドライバーによる事故防止のために、運転技術の衰えを自覚してもらうのが狙いだ。講習は国の委託を受けて各地の自動車教習所が6150円の費用で実施している。(1)交通安全の講義(2)夜間・動体視力検査、運転シミュレーターによる運転適性検査(3)実車指導--の3分野を各1時間ずつ計3時間行う。 ■半分は待ち時間 松本さんの受けた高齢者講習はこんな様子だった。 教室に行くと、10人以上の高齢者がいた。指導員数人が入れ替わりながら、講義と検査を実施した。しかし、運転適性検査で行われたのはアクセル動作のみで、ブレーキやハンドル操作の検査はしなかった。 警察庁の基準では3分野すべての講習を義務づけているものの、受講者や自動車教習所の都合で検査内容を省略することは認められている。しかし、松本さんは「講習の半分くらいは待ち時間で、無駄な時間が多かった。なぜ検査を全部できないのかわからない」と首をかしげる。 また、運転ぶりを点検してもらう実車指導のため、松本さんが用意されたセダンに乗り込むと、別の受講者が後部座席に乗り込んできた。受講者は軽トラックしか運転していないという理由から、警察庁通達で義務付けている実車指導を免除された様子だった。 同校は「ペーパードライバーや軽トラックの運転者に無理強いはできないので、本人の希望で運転させなかったが、今は全員に運転してもらうようにしている。また、運転適性検査を全部実施すると時間がオーバーしたり、高齢者が十分検査内容を理解できないため、省略していたが、改善の余地はあると思う」と話す。 松本さんは「高齢者の事故は増えているし、高齢者講習には意味があると思う。もっと効果的な講習にしてほしい」と指摘する。
■自動車学校で差 独自に工夫して高齢者講習を行っている自動車教習所もある。 静岡県牧之原市の榛南(はいなん)自動車学校は、01年からマニュアル車で車高の高い軽ワゴン車を導入した。周辺は農業地帯で、農作業のためマニュアル車の軽トラックを運転している高齢者が多く、「軽トラックで講習を受けられないか」との問い合わせが多かった。しかし、後部座席のない軽トラックは実車指導に使えないため、形の近い軽ワゴン車を選んだ。 昨年1年間の受講者1241人のうち、軽ワゴン車を希望したのは約6割に上った。 今年6月に受講した久保田猛さん(77)は「オートマチック(AT)車はおっかない。(マニュアルの)軽自動車があるから助かるよ」。実車では一時停止がやや不十分だったようで、「きちんと止まるところは止まるよう注意された。これからは気をつけたい」と話す。 同校の田中博巳・副管理者は「乗り慣れている車種だと、講習でもいつもの癖が出るため、効果的な指導ができる」と話す。 いつまでも運転したい--。多くの高齢ドライバーの思いだ。一方で、加齢に伴う心身の衰えは避けられない。老化をカバーしながら、安全にハンドルを握り、楽しくドライブを続けるにはどうしたらいいのか。「クルマ高齢社会」第5部では、高齢ドライバーの交通安全教育の現場から報告する。【板垣博之】 ◇07年受講者135万人、来年から認知検査も 高齢者講習は98年から75歳以上の高齢ドライバーを対象にスタートし、02年からは70歳以上も対象に加えられた。 07年の受講者数は135万4401人に上る。来年6月から75歳以上に認知機能の簡易検査が導入されるなど、警察庁で見直し作業が進められている。 高齢ドライバー問題に詳しい東京都老人総合研究所の溝端光雄・研究副部長は「高齢者講習は一定の効果を上げてはいるが、本人に自分の運転ぶりを気づかせるように変える必要がある。また、高齢ドライバーは視野が狭くなるが、本人が気づかない場合もあり、視野検査を実施して、実践的な講習にしてほしい」と指摘している。 ============== ■高齢者講習の主な内容 ▽講義(60分) ・講習概要の説明、交通事故の特徴など(10分) ・シートベルトの着用、加害者の責任など(10分) ・改正された道交法の知識、危険予測など(40分) ▽運転適性検査器材による診断と指導(60分) ・動体視力、夜間視力の検査 ・運転シミュレーターによる運転適性検査 (1)反射動作の速さ(2)判断の正確さ(3)状況に対応したハンドル操作の速さ(4)認知判断の速さ--などをチェック ▽実車による診断と指導(60分) ・基本課題 (1)運転姿勢(2)交差点の通過(3)カーブ走行(4)進路変更(5)駐車車両の横の通過 ・特別課題 (1)段差乗り上げ(2)車両感覚走行(3)パイロンスラローム(4)急ブレーキ体験(5)運転シミュレーター操作による危険予測と事故体験(6)死角の確認--の6課題から2課題程度を実施 □認知機能の簡易検査(09年6月から実施予定。警察庁の運転免許制度に関する懇談会の提言から) ・年月日、曜日、時間の記載 ・複数のイラストを見せて別の検査をはさんで、イラストを覚えているかチェック ・時計の文字盤を描く ・動物など特定グループの言葉をできるだけ多く記載 http://mainichi.jp/life/health/news/20080729ddm013100103000c.html (2008年7月29日 毎日新聞) |